近藤史恵の描く極上のフレンチとミステリが楽しめます。
下町の小さなフレンチレストラン、ビストロ・パ・マル。無精ひげの無口なシェフが作る料理は客の心を癒し、口を軽くするようだ。客達が口にする不可解な謎を、シェフがもてなしの料理と共に鮮やかに調理して解決に導いていきます。
最終章の「割り切れないチョコレート」では、ビストロ・パ・マルの近所にできた新進気鋭のショコラティエがミステリとなる。パ・マルでデザートに手をつけないまま言い争いをしている一組の男女。男はショコラティエ「ノンブル・プルミエ」のシェフ。女はその妹。今わの際の母親を見舞おうとしない兄が理解できないと嘆く女に、シェフはヴァン・ショー(ホットワイン)を薦めながら、その謎を解き明かします。
どの章もおいしそうなフランス料理とワインにあふれた、いい香りのする本です。まるでパ・マルでの食事のように気軽に楽しめる味わいが魅力で、旅行先のホテルで、ベッドに寝転びながら良い気分で読み終えました。
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