軽やかなタッチの文体が魅力の米澤穂信が描く青春ミステリ「古典部シリーズ」から、短編集「遠まわりする雛」を紹介します。
「遠まわりする雛」は「古典部シリーズ」の第4弾に当り、前の長編3作が長編なのとは異なり、オムニバス形式の短編6作で構成されています。語り手は「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーとする高校生、折木奉太郎。そして、その友人福部里志が話にユーモアを添える。
中でも秀逸なのは日本推理作家協会賞(短編部門)候補作になった「心あたりのある者は」で、このブログでも紹介したことがあるアントニイ・バークリー著の毒入りチョコレート事件が下敷きになっていると思われる作品です。普通なら聞き逃すような校内放送に隠された仰天の事件が、折木の推理で明らかになっていきます。
バレンタインデーの日に無くなったチョコレートの行方を追う「手作りチョコレート事件」は、青春ミステリらしく高校男子の心の揺れを描くストーリーです。
話は去年のバレンタインデーに遡る。幼馴染からバレンタインデーに手作りチョコレートをプレゼントされたにも関わらず、理屈をこねて受け取らない福部。市販のクッキーを生クリームで彩っても「手作りクッキー」とは呼べないように、板チョコレートを湯煎して型を作っただけで「手作りチョコレート」と言うのはおかしいというのだ。
幼馴染が今年のバレンタインデーに贈ったチョコレートは、どんな手作りだったのでしょう。
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