今年もサロン・デュ・ショコラ東京が始まりました。会場は伊勢丹新宿店本館6階の催物場で3部構成、しかもパート1が62ブランドで6日間、パート2が26ブランドで6日間、パート3の前半が47ブランドで6日間、同じくパート3の後半が49ブランドで7日間。全25日間にかけて、のべ145、いずれも名のあるブランドがイベントを盛り上げます。
Moment/Infinity
一瞬と、無限と、ショコラと。ショコラはさまざまな「時間」が重なりあって作られます。
サロン・デュ・ショコラ2025デジタルカタログ
カカオが育つ時間、生産者が素材に愛情を注ぐ時間。
ショコラティエが自らの技や美味を追求する時間。
人や自然が織りなす長い時間が、ひとつのショコラの中、
味わう一瞬につまっているのです。
20年以上の歴史を持つ日本のサロン・デュ・ショコラ。
今年はぜひ、「時間」が生み出すショコラの
豊かな美味しさや大いなるチカラを感じてください。
Part 1の一般会期二日目に行ってきました。テーマは CACAO ~躍動するカカオの瞬間~です。
10時過ぎに伊勢丹6階の催事場で入場整理券を貰いました。入場整理券の呼び出しは原則11時から始まります。200番代でしたので12時頃には入場できるだろうと判断し、一旦新宿を離れ、用事を済ませて12時過ぎに会場に戻ったら、既に400番が呼び出されていました。開場直後は混雑しても滞留時間は短いのかもしれません。
今年の入場口の会場装飾は写真が多めでした。会期ごとに変えるのでしょう。パートが変わるたびにパネルのチェックが必要です。
かなり上手く会場内の人数を管理できていたようで、歩くのに困らない余裕がある混み具合でした。一部のブランドに行列ができている他は大体空いていて、どこのブースに行っても販売スタッフの皆さんに詳しく説明を伺うことが出来ました。素敵なディスプレイやデザインのよいパッケージを見かけると、つい色々とお尋ねしたくなります。すると思いがけない話が伺え、新たな魅力を知ってそのブランドにますます興味がわくことがあったり。胃袋の容量が少ない分、その商品に込められた作り手のこだわりに興味が向くのかもしれません。今年もよい出会いがありました。
会場内にはチョコレートの甘い香りでむせ返るようでした。濃厚そうなデザートは見ただけで胸焼けしそうな気分になったので、会場内で最もさっぱりしてそうに見えたカカオハンターズのオムレットチョコバナナを買いました。会場内のイートインスペースで頂きます。
紙皿は朴葉のような質感で、波打つ縁が可愛らしい。カカオハンターズの印象によく合っています。
バナナ入りのチョコクリームオムレットにキャレがついたものです。バナナの酸味にチョコレートクリームの組み合わせが相性よくておいしかった。
今回パート1を眺めて思ったこととして、全体的に多くのブランドのデザインが明るくなった気がしました。チョコレート自体が暗褐色なので、本来白いパッケージのほうがコントラストが効いて見栄えがするものなのですが、これまで明度も彩度も低い、ソリッドで高級感を演出するパッケージをよく見かけました。パート1出展ブランドはカカオ生産地発を印象付けるためのナチュラルな雰囲気のデザインが多いから、そう感じたのかもしれませんが、流行は明と暗、豪奢と簡素とで振り子のように移り変わるものだから、以前の流行の揺り戻しとして明度が高いデザインが好まれる時流が来ていてもおかしくありません。明るいパッケージは写真が撮りやすいので大歓迎。
もちろん言うまでもなく、テオブロマのように毎回アートワークを丁寧に積み上げていくブランドには尊敬を抱きます。
クラフトチョコレートは、9月の東京チョコレートサロンを皮切りにシーズン問わずイベントが開催されているため、正直サロン・デュ・ショコラのパート1にそこまで期待をかけていません。もちろんメーカーとしてはサロン・デュ・ショコラという舞台にタイミングを合わせての新作発表や限定販売があるのでしょうが、ことクラフトチョコレートに関しては、競争を加速させる企みに加担したくない気持ちがあります。本イベントのテーマに沿って言い換えるなら、チョコレートが抱えるさまざまな「時間」をできるだけ大事に「消費」したいと思うのです。
私自身、カカオ生産者の暮らしや社会状況、チョコレート消費国との経済格差から生じる社会問題に取り組む人々を知るごとに、どういうプロセスで作られたチョコレートなのかを考えるようになりました。
カカオ生産国でチョコレートまで作ることが、最も貨幣を原産国に還元します。今回出展しているカカオハンターズ(コロンビア)、パカリ(エクアドル)、シブチョコレート(コスタリカ)、ディオゴヴァス(サントメ・プリンシペ)、ショコラマダガスカル(マダガスカル)、ラティテュードクラフトチョコレート(ウガンダ)、ガートココア(タイ)、フーワンチョコレート(台湾)、マルゥ(ベトナム)、テオアンドフィロ(フィリピン)、ノエルベルデ(エクアドル)、エルセイボボリビア(ボリビア)、これらはどれもカカオの生産国でチョコレートまで作っているブランドです。カタログブックをめくった時に、早い段階で大きく取り上げていることを見ても、日本のチョコレートシーンを長く牽引し、いつも作り手を大事に見つめてきたサロン・デュ・ショコラが、今回顧客に目を向けてほしいと願った部分だと思います。
熱帯地方でチョコレートを作るにはとてつもない苦労があるに違いありません。しかも品質を保持して日本まで輸送し販売するのです。先人が舗装した道ではなく、立ちはだかるいくつもの課題を乗り越えて、ようやく販売にまでこぎつけた商品です。商品である以上、努力賞なんてものはありませんが、手元のチョコレートができるまでの多くの人の手、プロセスに想像を巡らすだけで、チョコレートの味が変わってくるかもしれません。毎年買い続けると、その歩みが見えるものも出てきます。ぜひ、おいしくて応援したくなるブランドを見つけてほしいと思います。
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