セネル・パス(Senel Paz)著の「苺とチョコレート」を愛国者の大学生とホモセクシュアルの交流ってまとめちゃダメだろうね。
原題は「狼と森と新しい人間(EL LOBO, EL BOSQUE, Y EL HOMBRE NUEVO)」といい、主人公にとって狼であるホモセクシュアル(短編内では「おかま」と特別に言い換えている)のディエゴ、混迷するキューバを森、そして新しい人間として生まれ変わった主人公ダビデを表しているのでしょう。
つまり、そんな物語です。
そもそも、かの国では甘い物を食べる男は男として認められず、唯一口にできるものはチョコレートぐらいらしいのです。苺は女らしさの象徴で、そんなものを人前で食べる男は同性愛者であるという前提があって、この短編の結末に驚きがあります。
バルガス=リョサ、ホセ・マルティ等有名なラテンアメリカ文学者の実名が登場するので、その辺のマニアックな楽しみを知る人は原典引きの楽しみもあります(訳注は83個)。
この小説はスペイン語圏の優れた短編小説に与えられる「フアン・ルルフォ賞」を獲得し、セネル・パス自身が「苺とチョコレート(FRESA Y CHOCOLATE)」という題で脚本化し、その後アレア監督によって映画化されてベルリン映画祭銀熊賞を初め数多くの賞を獲得しました。
訳者は野谷文昭氏。訳者のあとがきも面白かったです。
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