岐阜県大垣市の田中屋せんべい総本家は創業安政六年(1859年)という老舗のお煎餅屋さん。伝統の「みそ入り大垣せんべい」を大切に守りながら、キャラメル煎餅の「まつほ」や創業当時の原点に立ち戻り新たに作り上げた「玉穂堂」等、新たな境地に挑む商品開発でも注目されています。
公式サイトの通販で、せんべいチョコクランチ WARETEMOを買いました。
中には、トレイに支えられた上で密閉包装されたホワイトチョコレートベースのクランチバーと、商品説明が書かれたリーフレットが入っています。
”瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ”
崇徳院
百人一首で一枚札としてよく知られた歌です。作者の崇徳院は京都最凶の怨霊としても有名で、絵画にもよく描かれています。歴史好き、妖怪好きにはお馴染み。
商品説明には「玉子せんべいチップ、ピスタチオ、オレンジをあわせ、ゴツゴツとしたホワイトチョコクランチに。割れた玉子せんべいはたくさんの素材と巡り合った末にアップサイクルされましたとさ」と書かれていました。
なるほどね。主役は割れた玉子せんべいなんですね。崇徳院のこの極めてドラマチックな和歌がどうしてアルファベットの商品名になったのか、不思議に思っていました。まさか、会いたがっていたのがおせんべいだなんてね。ふふふ。
田中屋さんの百人一首シリーズがいよいよ極まってきました。
ホワイトチョコレートのベールに包まれて、粗く割った玉子せんべいやピスタチオが大きな陰影を作り、表面に散らされたドライフルーツのラズベリーが目を惹きます。
なんと美しいチョコレートバーでしょう。水しぶきに光る岩肌が目に浮かぶようです。オレンジは時折輝く陽の光?それとも、どこからか流れてきたドングリだったりするのかな。ピスタチオの緑は水面に沈む水草かも。流れがゆるかなら岩に苔も生えるでしょうが。あぁ、そうか、「瀬をはやみ」だもの、普段は穏やかだけど水かさが増した川だったりもするのか。
さんざん眺めた後、ようやく口に運びます。ホワイトチョコレートの甘い香りに包まれて、歯ごたえある玉子せんべいがまろやかな甘みを加え、ピスタチオやオレンジピール、フランボワーズが味にアクセントをもたらします。どこを食べてもいろんな素材が混ざり合っておいしいね。
WARETEMO の表面に散らされたフランボワーズが、流れに揺れて集まってきた紅葉に見えました。穏やかな人生だと思っていたのに、コロナ禍が思いがけない人生の転換点となり、愛しい人と離れ離れになった方もいるでしょう。いつか誰もが心置きなく集まれる日を願って、田中屋さんがこの和歌を選んだように思います。
和歌を介した世界は凄まじいほどインスピレーションに溢れているなあと感動しつつ、パッケージの背面に書かれていた ”Rencontrer de la bonne pâtisserie revient â enrichir sa vie.” (おいしいお菓子との出会いとは人生を豊かにすること)が目に入って唸ってしまいました。そんなことを思いながら、手元をみると WARETEMO は既に残りわずか。食べやすいチョコレートってこれだから困る。
一見ホワイトチョコレートベースのクランチバーかと思いますよね。でも、パッケージ裏の食品表示ラベルには、しっかりと名称欄に「せんべい」と書かれていました。製造者がそういうんだから、これはせんべいです。
お値段は1080円。
総合点:☆☆☆☆
外観:☆☆☆☆☆
苦味:
甘味:☆☆☆☆
風味:☆☆☆
値段:☆☆☆☆
その他:割れた玉子せんべいが主役です
ღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღ
製品名:せんべいチョコクランチ WARETEMO
種類別名称:せんべい
原材料:カホワイトチョコ(国内製造)、小麦粉、砂糖、卵、ピスタチオ、有機オレンジピール、フランボワーズ/重曹、(一部に小麦・卵・乳成分・大豆・オレンジを含む)
内容量:1個
製造者:(株)田中屋せんべい総本家
ღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღღ
コメント