引網香月堂(ひきあみこうげつどう)は大正8年(1919年)に富山県高岡市に創業した老舗の和菓子店です。最もよく知られた銘菓「万葉の梅園」は国産の古城梅を使ったもの。地元高岡市は奈良時代の歌人で『万葉集』の編纂に深く関わった大伴家持が国守として赴任した地であることから名づけられました。
松屋銀座のバレンタイン催事、ギンザ バレンタイン ワールドでよごと(カカオ)を買いました。包装紙は黒を基調に花模様が入ったもので、まるで花火のよう。読みやすくも流麗な仮名文字で商品名が書かれていて、高級感が漂います。
箱から商品を取り出します。和紙のような風合いのレーヨン雲龍紙で密閉包装されています。淡黄蘗色の商品説明書には商品名の元になった大伴家持の歌「新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事」が書かれています。大小の光となり、ふわりふわりと揺れながら落ちていく雪のような仮名文字の美しさに見とれました。
中には15センチほどの長さの焼菓子が入っています。
よごとの商品説明によると「長崎にカステラが伝わったように、もしも富山の港にバームクーヘンが伝わっていたら…という夢想から創作調整しました」とのこと。こちらはそれのカカオ版です。
羊羹ではなくカステラでもなく、こちらは和のバウムクーヘン。断面を見れば明らかです。円柱形ではないので回しながら焼くのではなく、生地を塗り重ねながら何度も焼いて作っているのでしょう。手間を想像すると気が遠くなります。和歌の「今日降る雪のように良い事もたくさん積もれ」という願いを心に置きながら、この一層一層を味わいましょう。
ふんわりと軽い口当たり。食べる前から広がる香りがとても暖かい。米粉と白隠元のふくよかさに卵の旨味と黒糖のミネラル感。そこにカカオパウダーのタンニンが加わって、後味がお味噌やみりんなどにも見られるような熟成香になっています。白隠元の奥歯にシャクシャクと響く繊維がマジパンのようで面白い。そして、お抹茶としっくり合うところが、まさに和菓子なんだなと納得しました。
個人的に和洋折衷を好まない上に、和菓子屋さんのチョコレートを使った製品はどれも同じクーベルチュールを使っているせいで味が似たりよったり。形が違うだけで面白みに欠け、過去あまり手に取ることがありませんでした。逆にパティスリーが作る和風なお菓子も、現状は楽しい以上のものではありません。しかし、昨年こちらを頂いて、和菓子界がチョコレートを素材として吸収し次の段階に進化しいることがわかって大変驚かされました。おかげで今年はやたらと和菓子を買う羽目に。すべてはこれから始まったという、私の中で記念の逸品です。
お値段は972円。
総合点:☆☆☆☆☆
外観:☆☆☆☆
苦味:☆☆
甘味:☆☆
風味:☆☆☆☆
値段:☆☆☆
その他:いつもの語彙ではこぼれていく香りなのがもどかしい
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製品名:よごと(カカオ)
種類別名称:生菓子
原材料:黒砂糖(国内製造)、甜菜糖、卵、白いんげん豆、白ごま、米粉、菜種油、カカオパウダー、うるち米、米糀 (一部に卵・ゴマを含む)
内容量:1本
製造者:(有)引網香月堂
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